※前回に引き続き日付が前後してます&妄想炸裂してます。
この日はエドワード
とマルティナちゃん
にかかりきりでファビウスさんを誘えていませんでした。
すると、
ファビウスさんから誘ってくれた……!!!
う、嬉しいっっ(´Д⊂ヽ
2度目に恋人になってからファビウスさんが誘ってくれるのは、はじめてでした。
この日、ちはるは決意していました。
「ファビウスさんに結婚を申し込もう」
*****
夜のうちに市場へ行って、婚約指輪を手にしました。
結婚は、最初から……自分から申し込もうと決めていました。
名字のこともありますが、何より、
"" 自分がファビウスさんを幸せにするんだ ""
という気持ちが大きかった。
一度振られて、でも諦められなくて。
もう一度恋人になった。
それは決してファビウスさんの事を思っての行動ではなく、あくまで自分がファビウスさんが好きで大好きで。
どうしたって諦められなかったからです。
その時に絶対ファビウスさんを幸せにすると誓いました。
なのにファビウスさんから言い出してくれるのを待ってるなんて、そんなずるい事はできません。
******
翌日。
誓いの丘に向かいます。
しっかり指輪を持って。
ちはるが先導します。
そして誓いの丘の頂上へ。
指輪を握りしめて深呼吸。
思い切って切り出しました。
指輪を差し出すと、ファビウスさんは少し驚いたようでした。
その表情が、次にどんな風に変わってしまうのかを見るのが怖くて。
ちはるは下を向きました。心臓がドキドキ鳴っていて、冷や汗が滲んでくるのが判りました。
「ファビウスさんに、この指輪をもらって欲しい」と。
そして結婚して欲しいのだと。
ファビウスさんの顔は見られませんでした。
風の音と、木々の揺れる音だけが、随分大きく聞こえて、その後、ファビウスさんが返事をくれました。
指輪は、受け取ってもらえませんでした。
*****
ファビウスさんに家に送ってもらう道中。
滲んだ涙をぬぐって、嗚咽をこらえて。
前にいてくれて良かった。きっと涙は気付かれなかっただろうから。
家の中から、ファビウスさんを見送って、ベッドに潜り込んで。
誰も来ないように祈りながら、ちはるは思いっきり泣きました。
"" 駄目だった。受け取ってもらえなかった。 ""
その思いが溢れて、涙が我慢できない。
*****
気づけば、日が暮れていました。
ここ最近夜の日課は、邸宅での訓練。
親友であるエドワードと
マルティナちゃん
に幸せになってもらうために。
頭がぼーっとしていて動くのがおっくうでした。
でも2人の笑顔を思い出して、体をベッドから引き離します。
カバンに訓練用具の「甘い実」と「ククレーテ」が入っている事を確認して、家を出ました。
入ったままだった指輪は、見ないふりをしました。
*****
カルナ区を抜けて、邸宅へ向かうと、必ず大通り(東)を通ります。
その道を左へ折れる直前、ちはるの足が止まりました。視線は、ハールの庭園へ向かう道へ。
そこは、去年の暮れ近く。ファビウスさんに別れを告げられた場所でした。
"" 他に好きな人ができたんだ ""
あの時も、怖くて。別れを告げるファビウスさんの顔を見る事ができなかった。
一体どんな顔で、彼はちはるを見ていたんだろう。
その後の絶望も、今でもはっきり覚えています。
悲しくて、現実を認められなくて。悔んで、羨んで、嫉妬した。
自分から離れる事がファビウスさんの幸せなんだと思いつつも、諦められなかった。譲れなかった。
そんな自分を励ましてくれたエドワードの言葉も。
悩んで悩んで、もう一度恋をしようと決めた。
"" もう一度ファビウスさんと友人になり、もう一度ファビウスさんに恋をして、もう一度、自分を好きになってもらいたい。 ""
ちはるは、ファビウスさんがいてくれるなら、何よりも幸せになれる。だから、その幸せで、もっともっとファビウスさんを愛して、きっとファビウスさんを幸せにしてみせるんだと。
その思いだけでここまで来ました。
"" これで諦める? ""
自分に問いかけます。
カバンの中に、指輪の感触があります。
これは、受け取ってもらえなかった。
でも、ファビウスさんは何て言っていた??
「まだ、気持ちの準備ができないんだ」
彼はそう言っていた。私は怖くて、顔を見る事すらできずに、受け取ってもらえなかった事実だけに傷ついて、泣いていた。
でも、まだ拒絶されたわけじゃない。以前とは違う。
振られたわけじゃない。はっきり別れを告げられたあの時と比べて、今はそんなに絶望的な状況なの?
ううん。
ファビウスさんは、準備ができてないって言った。私の事を、嫌いになったわけじゃないって、思って良いよね?
まだ希望はあるって、思って良いよね?
屁理屈だって良い。
みっともなく足掻く事の方が、ファビウスさんが私じゃないだれかと、家庭を築いていくのをただ見ているよりも、ずっと良いって、あの時決めた。
だから諦めるのは早い。
まだ私は頑張れる。
カバンの中の指輪を一度ぎゅっと握って、歩きだします。
邸宅へ。
今は、ただおもいっきり体を動かしたい。
弱気な自分を叱ってやるんだ。
そして、ファビウスさんの元へ行こう。
もう一度頑張る。諦めない!!
*****
そして、遺跡の滝へ。ここならきっと誰も来ないから。
滝の流れる音に負けないように、ファビウスさんに伝えます。
今度は下なんか向かない。目をそらさない。
大好きなファビウスさんの目を見つめて、伝えました。
"" ファビウスさんが、大好きです ""
ずっと一緒にいたい。
あなた以外は考えられない。
ファビウスさんが幸せになれるように、頑張ります。
絶対幸せにします。
だから、
"" 私を選んで下さい ""
ファビウスさんは、じっと私を見ていた。
真剣な顔。
泣きそうだったけど我慢。
ここで泣いたら、きっとファビウスさんの本当の気持ちは聞けない。
優しい人だから。
前よりもずっと長い時間だったように思う。
ファビウスさんの真剣な顔が、ふっと溶けて。
そして鮮やかに、私の大好きな、笑顔に変わった。
"" 幸せにするよ ""
わかったよって。言ってくれた。
……私を、選んでくれた?
動けないでいたら、ファビウスさんは笑顔のまま、目線を合わせて、私の手に触れた。
触れられてはじめて、指輪を握りこんだ指がガチガチなのに気付いた。
急いで指をほどこうとしたけど、緊張してて上手く動かない。
焦っていたら、近くでファビウスさんの小さく笑う声が聞こえて、彼の手が固まった私の手をほどいていく。
ちょっと時間がかかったけど、指輪は、ファビウスさんの手に。
ファビウスさんは、その指輪を左手の薬指にはめて、ちょっと照れくさそうに、子供みたいに笑った。
"" ふふ、僕の方からちはるさんにプロポーズ、したかったのにな ""
もう我慢できなかった。
涙が溢れて止まらない。
これまでとは違う、嬉しくて嬉しくて。
ぎゅっとファビウスさんの腕が私の背中に回った。
あったかくて、もっと泣けてくる。
今まで何度も泣いたけど、今は違う。
ファビウスさんが一緒にいてくれる。
もう、一人で泣かなくて良いよね。
[12回]
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ちはるちゃん、頑張りましたね(>_<)
読んでてドキドキしました!!
小説を読んでいるようでした。
もう泣かないで。幸せになってね、ちはるちゃん!!
これからは、泣く事があってもファビウスさんの胸で思いっきり泣けばいいよ~~。